るどのにっき

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徒然なるままに、心に移りゆくよしなしごとを とかっこつけてみたけれどただの文字書き習慣付けです

「天才スピヴェット」の感想 ※2016/10/21にぷらいべったーで公開した記事

「天才スピヴェット」

某アニメ映画まで話題でもなく無名というわけでもない映画……だと思う。(身近にあまり映画好きがいない)
結構前から見たいなーと思いつつ浮気しまくってついこのあいだ見た。もともとは何か他の映画を借りたときに予告かなんかで入ってたのを見て題名メモってた。

簡単にあらすじを言うと永久機関もどきを発明した西部の牧場の少年がW.D.C.スミソニアンまで一人でスピーチをしに行くというもの。

スピヴェット一家の変わり者は彼だけでなく、無口な父親はまさにカウボーイで母親は研究に熱心な昆虫博士な為、一般的な感性を持つのは女優を夢見る姉くらい。ただこの天才T.S.スピヴェット少年、双子の弟を事故で亡くしていてその罪の意識にとらわれているのである。

この私も彼と同じように二卵性双子の片割れであるから彼の気持ちを考えるだけで胸が苦しくなる。
双子の弟のレイトンはT.S.よりも体格がよく、父と同じようにカウボーイにあこがれていて猫に括り付けた缶を打ち抜けるほどの銃の腕前だったため、T.S.はきっと父は自分よりもレイトンを愛していたと思っている。
分かる。よくわかる。きっと両親は子供たち全員を愛してるのだろうけどそう思っちゃうんだよな。分かる。

さてこのT.S.少年、優秀だが優秀すぎて先生には生意気と言われ、論文が科学雑誌に掲載されるわけだが彼の研究の内の1つ磁気パワーがナンチャラ(筆者は物理弱者の為よく分からなかった。)で動く永久機関を開発し送ったところ見事賞を獲得しその授与式に来るよう電話がやってくる。
その電話の受け答えと嘘が可愛い。頭がいいのは分かるごまかし方だがとても子供らしい発想に思えて可愛いのだ。というかそれにごまかされる大人も大人だ。

最初は断ったT.S.だが弟の事故以来の罪の意識やら家族とうまくいってないことやらでスピーチに行くことにする。その荷物の準備もかわいい。宝物を詰めて持っていく感じがもう何ともいえずカワイイ。
そうして荷物を持って早朝に出ていく直前にレイトンの部屋に声をかけていく。その部屋がまあ彼の死の直前そのままという感じで家族の誰もが受け入れられてない感がすごい。さっきカワイイと思ったら切なくしてくる。
電車に乗るために歩いているときに父親の車が真横を通って行ったのに反応がなかったことにも「きっと僕は追放されたんだ」とかモノローグで言っちゃうT.S.がまた切なさをあおってくる。

さあこれからどうやって電車に乗るんだろうと思うと、なんと貨物車。信号に細工をし貨物車に乗り込んで暇つぶしになんか高尚な遊びをしている。なんか詩的に天気とか称えてみたりカワセミ観察してみたり。警備員に見つかりそうになって荷物のキャンピングカーにもぐりこんでくつろいでみたり。
そして持ってきた母親の日記読んで苦しんだり旅路にちょくちょく顔を出すレイトンの想像もあったりして。
「これは冒険なんかじゃなくてただの家出だ」みたいなことを思ってる彼が悲しい。

旅で出会った列車整備のおっさんやヒッチハイクしたトラックの運ちゃんが家出少年に優しくて、その上彼らの話もちゃんと聞いて考えるT.S.がとてもいいこだとしみじみする。確かに頭が良くて科学的理論的に正しくない事にはつい尋ねてしまったり訂正してしまうが、天才にありがちなスレている感じがない。だけどチビだとなめてかかってきた警官をついやり込めてしまうところは子供らしくていいなと思う。

そうしてけがをしつつも無事スミソニアンにつくわけだが彼が10歳の少年と分かってからの協会側は明らかに欲にまみれている。おとなきたない、さすがおとなきたない。そして家に帰されないようにまた嘘をつき、素直に大人たちの言うことを聞くT.S.。なんだか見てるこっちが罪悪感に苛まれるぞ。

授与式のスピーチは感謝と永久機関の簡単な説明の他にレイトンの事故について話す。T.S.は気づかなかったが聴衆の中には彼の母がいた。
スピーチは無事に終わり取材が殺到する中でとあるTV番組にでるとなんと母も出演する。生放送中にお説教されて事故の責任はないと諭されるT.S.。そうして母子は番組の途中で帰っていく。ちなみにお姉ちゃんはおうちでひたすらツッコミをいれていた。
バックヤードで協会側のおばさんにののしられても母が相手をビンタし、番組側に引き留められるも父が司会者を殴って三人で帰る。父におんぶされて帰るT.S.はもう苦しんではいないように見えた。

その後に後日談的に入るエピソードは家族が立ち直っていることをしめしていてほっこりする。というかそれを見るとかーちゃんととーちゃんはふたりとも不器用なツンデレにしか見えてこない不思議。

天才T.S.スピヴェット少年は旅路の間、一貫してすこし知恵はあるけれどただの無力な少年としか描かれていない。思考が子供とは思えない展開をしてたり、悩みが深刻だったりするけれどやっぱり10歳なんだなぁと感じる。いろんな痛みを乗り越えて少年が少し大きくなり、家族の仲が修復される、そんな映画だと思う。

ちなみに主人公T.S.スピヴェット役の子は6ヶ国語くらい話せて格闘技もやってるリアル多才ボーイらしい。超絶可愛いのに多才とか天は二物与えてんな。あとスピヴェット母はヘレナ=ボナム=カーターで彼女が大好きな私は嬉しかったです。

それから途中途中で入る場所を示す(Westとか)の演出やT.S.の思考の演出が素敵だと思う。EDロールも。

ここまで書いておいてなんだがこの映画での感想は三つ。
一つ目。主人公が二卵性双生児というめっちゃ共感のツボを押してくる。
二つ目。少年の冒険と家族の修復という両立が難しいテーマがうまくかみ合ってる。大抵少年の冒険は家を旅立つ感じになると思う。
質問があれば受け付けます……。三つ目?三つ目は……。
主役のT.S.がすげえかわいい。

終わり。